東京高等裁判所 昭和26年(う)2583号 判決
論旨は原判決は破棄前の第一審判決が被告人に対し言い渡した懲役一年六月(但し三年間執行猶予)及び罰金一万円の刑より重い刑を科さねばならないとしながら被告人に対し懲役一年六月の刑を科したのは前者の刑より軽い刑を科したものであるから判決の理由にくいちがいがあるといい、刑の軽重比較については刑法第九条、第十条によるべき旨主張しているのであるが、右刑法の規定は本来法定刑の軽重に関する規定であつて、宜告刑の軽重比較に関する規定ではないのであるから本件の場合に直ちに適用し得ないものといわなければならない。しかして、執行猶予を附した懲役刑とこれを附さない懲役刑とは後者を重いとみるべきことは執行猶予のもつ実質的な法律的社会的価値判断に照して是認せらるべきであつて、このことは執行猶予を附した懲役六月の刑より執行猶予を附さなかつた禁こ三月の刑を重いと認めた最高裁判所の判例(昭和二五年(あ)第二五六七号昭和二十六年八月一日大法廷判決参照)に徴しても窺い得るところであつて、しかも、軽い懲役刑に罰金を併科しても重い刑を科したことにはならないことは云うまでもないところである(最高裁判所昭和二四年(れ)第一二二五号同年七月五日第三小法廷判決参照)から原審の科刑は破棄前の第一審判決より重い刑を言い渡したものといわなければならない。したがつて原判決には所論のように破棄前の第一審判決より重い刑を科さなければならないと説示しながら軽い刑の言渡をした違法は存しないから論旨は理由がない。
(註 本件は量刑不当により破棄自判)